共分散とは?求め方・公式・相関係数との違いを例題で解説

共分散とは、2つの変数がそれぞれの平均から同じ方向に動くか、反対方向に動くかを数値化する指標です。値が正なら一方が平均より大きいときにもう一方も大きくなりやすく、負なら反対方向に動きやすいと読みます。

この記事では、共分散の公式、実際の求め方、正負の解釈、相関係数との違い、共分散行列、Excelで計算するときの使い分けまで、例を使って整理します。

2つの変数が平均から同じ方向に動く様子と共分散を表す散布図の概念図
共分散は、2つのデータが平均から同じ方向に動くかを捉えます。

まず結論:共分散とは

共分散は、2つの変数の偏差を掛け合わせ、その平均を取った値です。ここでいう偏差は「各データ − その変数の平均」を指します。

共分散 = 2つの偏差の積の平均

同じ方向の偏差が多いと正、反対方向の偏差が多いと負になります。ただし、共分散の大きさだけで「関係が強い」と判断することはできません。

共分散の公式と意味

2つの変数をX、Y、データ数をn、Xの平均を、Yの平均を ȳとすると、母共分散は次の式で求めます。

Cov(X,Y) = Σ{(xᵢ − x̄)(yᵢ − ȳ)} ÷ n

標本から母集団の共分散を推定する場合は、分母をn−1にする標本共分散を使います。どちらが正しいかは、手元のデータを母集団全体として扱うか、母集団から抽出した標本として扱うかで決まります。

項目意味共分散での役割
xᵢ・yᵢ同じ観測単位のXとYペアになったデータを使う
x̄・ȳそれぞれの平均平均からのズレを作る
(xᵢ−x̄)(yᵢ−ȳ)2つの偏差の積同方向なら正、逆方向なら負
n または n−1割る数母共分散か標本共分散かで選ぶ

共分散の単位は、Xの単位とYの単位を掛け合わせたものになります。たとえば、勉強時間(時間)と得点(点)の共分散なら、単位は「時間×点」です。このため、単位や尺度が違うデータ同士では、共分散の大きさをそのまま比較しにくい点に注意が必要です。

例題で見る共分散の求め方

次の4組のデータについて、母共分散を計算します。XとYの平均から偏差を求め、偏差の積を平均する流れです。

観測XYX−x̄Y−ȳ偏差の積
112−1.5−2.53.75
224−0.5−0.50.25
3350.50.50.25
4471.52.53.75
  1. Xの平均は (1+2+3+4)÷4 = 2.5、Yの平均は (2+4+5+7)÷4 = 4.5 です。
  2. 各データから平均を引き、XとYの偏差を作ります。
  3. 対応する偏差を掛けると、積の合計は 3.75+0.25+0.25+3.75 = 8 です。
  4. 母共分散は 8÷4 = 2 になります。
答え:このデータの母共分散は2です。標本共分散として計算するなら、8÷(4−1)で約2.67になります。

正の共分散・負の共分散・0の読み方

共分散の符号は、2つの変数が平均からどの方向に動くかを表します。散布図で全体の傾向を確認すると、数値の意味を読み違えにくくなります。

正の共分散と負の共分散を上向きと下向きの散布図で比較した図
上向きの傾向は正、下向きの傾向は負の共分散として表れます。
共分散の符号読み方注意点
Xが平均より大きいとき、Yも大きくなりやすい正の関係の強さは共分散の値だけでは比較できない
Xが平均より大きいとき、Yは小さくなりやすい反対方向の動きを示すが、因果関係とは限らない
0に近い偏差の積が正負で打ち消し合っている線形な関係が弱くても、曲線的な関係が残る場合がある

共分散が0だからといって、2つの変数が完全に無関係とは限りません。U字型や円形のような非線形関係では、正負の偏差の積が打ち消し合い、共分散が0に近くなることがあります。

共分散と相関係数の違い

相関係数は、共分散をそれぞれの標準偏差で割って標準化した指標です。共分散が「一緒に動く方向」を見るのに対し、相関係数は単位の影響を取り除いて、線形関係の強さを−1から1で比較できます。

比較項目共分散相関係数
値の範囲上限・下限はなく、単位に左右される−1から1の範囲
単位XとYの単位の積になる単位を持たない
主な用途共分散行列、モデル計算、偏差の向きの確認関係の強さを比較・説明する
読み方符号が同方向・逆方向を示す符号と絶対値で線形関係の方向・強さを見る

たとえば、同じ相関関係でも、点を「点数」から「100倍した点数」に変えると共分散は変わります。一方、相関係数は単位変更の影響を受けにくいため、異なる尺度のデータを比較するときに向いています。

実際のデータで共分散と相関係数を合わせて確認したい場合は、相関係数計算ツールを使えます。相関係数の値だけでなく、散布図や平均からの偏差も確認し、因果関係と混同しないように読み取ります。

共分散行列とは

変数が3つ以上あるとき、変数の組み合わせごとの共分散を表に並べたものが共分散行列です。対角成分には各変数自身との共分散、つまり分散が入り、行列は左右対称になります。

2変数の共分散行列の形

[分散(X), 共分散(X,Y)]
[共分散(Y,X), 分散(Y)]

共分散行列は、主成分分析、回帰分析、機械学習などで、複数変数のばらつきと組み合わせをまとめて扱うときに使われます。単独の「共分散とは」という問いでは、まず2変数の公式と符号の意味を理解してから行列へ進むと整理しやすいでしょう。

なお、共分散行列共分散構造分析は関連する用語ですが、同じ意味ではありません。後者は複数の変数間の構造をモデル化して検証する分析手法であり、基本的な共分散の計算とは別のテーマです。

Excelで計算するときの注意点

Excelでは、母共分散と標本共分散で関数を使い分けます。手計算の答えと合わないときは、分母がnかn−1か、XとYのデータ範囲が同じ長さかを確認してください。

目的関数使う場面
母共分散COVARIANCE.P入力したデータ全体を母集団として扱う
標本共分散COVARIANCE.S母集団から抽出した標本として推定する
  • XとYの対応する行がずれていないか確認する。
  • 片方だけ欠測している行をどう扱ったか記録する。
  • 母共分散か標本共分散かを、レポートや資料に明記する。
  • 共分散の大きさを比較する前に、データの単位と尺度をそろえる。

分散や標準偏差も同時に確認したい場合は、分散計算ツール標準偏差計算ツールを併用すると、共分散と相関係数の関係を確認しやすくなります。

よくある質問

正の共分散は、2つの変数が同じ方向に動きやすいことを示しますが、関係の強さまでは共分散だけで判断できません。単位の影響を除いて強さを比較するときは、相関係数も確認します。

必ずしも無関係とは限りません。共分散は主に線形な同時変動を捉えるため、曲線的な関係がある場合でも0に近づくことがあります。散布図や別の分析方法も確認してください。

モデル計算や共分散行列で偏差の組み合わせを扱うときは共分散、単位の異なるデータ間で線形関係の方向や強さを説明するときは相関係数が向いています。

母共分散は分母をnとしてデータ全体の共分散を求め、標本共分散は分母をn−1として母集団の共分散を推定します。データの位置づけに合わせて選びます。

対角成分には各変数の分散、非対角成分には変数どうしの共分散が入ります。複数変数のばらつきと組み合わせをまとめて扱うときに使います。

まとめ

共分散は、2つの変数が平均から同じ方向に動くか、反対方向に動くかを示す指標です。公式は偏差の積の平均で、正なら同方向、負なら逆方向の動きが読み取れます。

ただし、共分散は単位の影響を受けるため、関係の強さを比較するときは相関係数も確認します。母共分散か標本共分散かを明記し、必要に応じて相関係数計算ツール回帰分析計算ツールと組み合わせてデータを読み取りましょう。